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梅雨だつってんのに雨全然降らなかったですね。
至極残念村の村長さんより残念な気持ちです。こんばんは。


というのも、ぼく、
雨が好きなんです。大好きなんです。

だいたい皆さん、雨が降っていると、雨嫌だなあとか雨嫌いだなあとか
雨嫌だなあとかおっしゃいますことでしょうが、ぼくは好きなのです。
朝起きて、雨が降っていると、しあわせな気持ちになります。

その雨好き度はなかなかどうして強烈で、
目の前に大金の入ったアタッシュケースがあっても、外がどしゃぶりなら
迷うことなく雨のほうに見とれてにやにやするし、
目の前に素敵な異性がいても、外がどしゃぶりなら
迷うことなく雨のほうに見とれてにやにやするし、
目の前にピカチュウがいても、外がどしゃぶりなら、
いや、さすがに本物のピカチュウいたらピカチュウのほう捕まえますが、
とにかくそのくらい、めったなモノには負けないくらいに雨が好きなのです。



小さい頃から、カエルやカタツムリや雨おばけなどの雨の日特有の面白生き物は
けっこう好きだったので、もともと別段雨嫌いというわけでもなかったのですが
本格的に「あれ?雨が好きだわ」と思ったきっかけは、中学生の頃でした。

 「なんか、雨が降ると、みんな傘をさしているなあ」

という、至極当たり前だろうそれ、という事に、ある雨の日に気がついたのです。
中学生という多感な時期、周囲には色んな方向にアレな人が大勢いました。
でも、これだけたくさん色々な人がいるというのに、雨に濡れるのだけは、
みんな同じように嫌なんだなあ、って。それが、たまらなく面白い事のように
感じられたのでした。
みんな雨に濡れたくないから、傘をさすし、家には屋根があるんだなー、って。

そうして思ってみると、なんというか、雨降りというものが、世界に発生する
すごく面白いイベントのような気がしたのです。
雨が降っている日にでかけてみると、普段は誰かしら遊んでる公園にも
人通りの多い道にもだれもいないし、不良がたまってる高架下のなんか
変なスペースとか、屋外にまで商品のワゴンを並べまくってるお店とかも
閑散としていました。狭い路地で立ち話をしていていつも通行の邪魔になってる
おばさんとかもいない。

ちょっと建物の少ない郊外にでも行こうものなら、全く人の気配がしなくて、
さながら全く別の世界のようでした。



中学生という多感で繊細な時期。
周りとのすれ違いや、そこに生まれる駆け引き、裏切り、謀略、現れる第三の勢力。
歪められた歴史、古の魔術、呪われた血族……。望まれぬ結末へと動きだした物語に、
生きる意味がわからなくなったり、誰もぼくのこと分かってくれない気がしたり、
アイデンティティの消失に呻いたりしながら
世の中に対して居心地の悪さのようなものを感じていたぼくにとって、
そこは、ぼくのあるべき居場所かのように感じられました。

普段どこにいるのかもよく知らないかえるやかたつむりやピカチュウが
そこでは我が物顔でうろついていて、
ああ、ぼくは、“こっち”の仲間なんだなあ、なんて思ったものです。
雨の降っている空間が大好きでした。あるいは、もうその頃には
雨そのものに恋していたのかもしれません。

その後も、辛いことやかなしいことがあると、ぼくは雨の中を一人
あてもなくさまよいました。
ぼくしかいないその世界は、唯一ぼくが泣いても良い空間でした。



今となってしまえば、中二病だったんだなあの一言で片づけることもできますが
それでもあの頃のぼくがどしゃぶりの日に感じた、言いようのない安らぎは
嘘じゃないのです。

もうてるてるぼうずをも従えるすてきな大人、
雨の日に外へ飛び出したりはしない歳にこそなりました。
けれど今でも雨音を聞いたり、雨の匂いを嗅いだりすると、
この世界すべてが、今だけはぼくの世界であるような気がするのです。

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