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 「無様なものだな、たった三年でこうも変わってしまおうとは」

 「違います。三年と八ヶ月、それに二日」



きわめて高度に発展したメガロポリス。
七色に輝くネオンサイン、空中を飛び交う車のライト。
絵に描いたような未来都市となったその町の片隅で、
車椅子の女と、作業服の男が会話している。
男の頭には、安全第一と書かれた黄色いヘルメット。



 「お前は相変わらず正確なんだな、ルーシーよ。」

 「それが私の仕事でしたので。
……それよりも、今日はどうしてまた、私をここへ呼んだのですか?
ツインダイナモ・シャインのゲートウェイ。」

 「シャイン。そうやって呼ばれるのも久しぶりだな……」



ふいに、彼の右腕のライトが明るくなる。
心拍数の上昇に呼応して、心臓に取り付けられた二つのダイナモが動き出したのだろう。
かつてチームで一番の強さを誇っていた、あの頃と変わらないはずのその輝きだったが
今や町中にあふれる無数の光にまぎれ、幾分も弱々しい、頼りないものに見えた。


 「見てみろよ。今となっちゃこの程度さ。
俺が命を削るより、町の連中のどうでもいい明りのほうがまぶしいんだ」


ゲートウェイと呼ばれた男は、吐き捨てるように言う。
かつての仲間にかつての呼び名で呼ばれた嬉しさから、
現状を思い知らされたことの悲しさに彼の思考がシフトしていくにつれ
心拍数は戻り、ライトの光も弱まってゆく。


 「で、ああそうだ、なんでここへ呼んだかだったな。
ここの取り壊しがついに決まったよ。」

 「ほんとうですか」


“ライトニング・カンパニー”。
二人が見据えた先、ボロボロの赤錆びた看板が、地面に埋もれていた。



より少ない電力でも明るいLED電球の台頭により、町はかつての時代とは比べ物にならない
明るさにあふれていた。
それは、心臓の鼓動を電気に変えるなどという回りくどく危険なことをせずとも、
誰でも簡単に素晴らしく明るい光を手に入れられるようになったということ。
人々が豊かな生活を得て、スラムだったその町が発展を遂げた半面、それは
社長シュミットの失脚により“陰り”を見せはじめていたライトニングカンパニーに
トドメをさすには、十分すぎるものであった。


 「これも時代の変化です。諦めてください。」


ルーシーが唐突に言う。
なにか言おうとしていたゲートウェイは、
不服そうな顔で無言のまま、開きかけた口を閉じた。


 「あの頃の、“輝いていた”思い出話なら、聞きたい気分ではありません。
我々の時代は終わったのですから、過去に思いをはせてもしょうがない」

 「確かになぁ。もうライトニングバトルなんて意味がないのかもしれない。
みんな既に“目が眩んじまっている”んだから」

 「町はずいぶん明るくなりましたからね」

 「違うよ。“明るい未来”というやつにさ」

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