ぼくはいまだに、小学校に上がったときに買ってもらった
学習机を、パソコンを置いたり、書き物をしたりの作業机として
使っているのですが。
その、学習机の上についてるハイパーシステマチック棚(命名:ぼく)
が、外れることに今日気づいたのです。(参考:
こういうの)
この棚、パッと見こそハイパーシステマチックで、便利そうなのですが
なにせ横に長い机の、奥側半分を占める大きさがあってしまうがために、
これがあることにより使用可能な領域が半分以下に狭められてしまい、
結果的に机自体のパフォーマンスを大きく下げてしまっているのです。
ましてや、パソコンを置いているのだから、その狭さときたら……。
というわけで、今日はDo you be?通称土曜日だったので、それを利用して
机と棚、愛の空中分解、融合解除、アーマーパージにいそしみましたわけです。
そしたらまあ、でてくるわでてくるわ、愛と友情、棚と机の狭間に埋もれていた、
わけのわからないガラクタやガラクタ、それにガラクタなどのガラクタ類。
そもそも机自体かなり汚かったので、その掃除も兼ねるつもりでしたが、
自分でもおどろくほどのガラクティズムでした。
ポケモンカードのダメージカウンターやどく・やけどカウンターが
机の隅に大量に散らばっており、机が受けていた大きなダメージを物語っており、
その数値たるや脅威の370ダメージ。MTGで+1/+1カウンターとして
使っていたおはじきも1つ乗っていたので実質369ダメージですが、
ぼくが今まで何の気なしに使っていた机が、これだけの苦痛を味わっていたのだと
思うと、涙があふれてとまりませんでした。
それらのカウンターを次々取り除き、回復させていくぼくはさながらハピナス。
その他のジャンクションを片付けたりもしていると、
結構黒歴史とも呼べるモノが色々出てきて、精神的ダメージもありましたが
しかし、今のぼくは最強の特殊受けであるハピナスです。へこたれません。
次々と塵芥に塗れた、失われた筈の古代の遺物(レリック)を片付けることに成功しました。
超機能の棚が圧迫していたその場所は、広々とした空き地へと姿を変えたのです。
なんというでしょう。これだけの広さがあれば、野球もサッカーも思いのままです。
しかし、誤算といいますか、空間を得たことの弊害もまた、確かに存在していた
のです。
世に存在する最強の収納スペースとして名高いその棚は、
ちいさな本棚としても機能していました。しかし、それを取り除いてしまった今、
その本棚にあったノートやファイルの行き場がなくなってしまったのです。
机の隣に普通の本棚もあるにはあるのですが、そこには既に
世界の童話や動物図鑑、辞書に画集にあおぞら文庫、天より授かりし伝説の書物。
ティラノサウルスの骨の模型に、ロボットの貯金箱、つぼに入ったたこのおもちゃ。
さらにはゴミまでもがひしめいており、机を追われた本棚難民の居場所は
どこにもありませんでした。
しかし、希望は失われません。とりあえず無理にでもスペースを確保するべく
いらないものから捨てようと天より授かりし伝説の書物を取り出したところ、
そこにこんなことが記されていたのです。
~咎人よ。地を追われしものよ。遥かなる天空を目指せ。
汝の求める楽園(ユート☆ピアッ!)は、そこに存在する~
ぼくはそれを読み、藁にも縋る気持ちで頭上を見上げました。
直後、ここは部屋の中なのだから、天井しか見えないじゃないか――
そう思ったのですが、
そう、それは、確かにそこにありました。
ぼくの部屋遥か上空、本棚の一番上。
そこには巨大な建造物があり、プロペラ機が周りを飛んでいました。
要約すると、昔作った何らかのオブジェと、プロペラ動力で飛ぶ飛行機が
本棚の上に乗っていました。
これをどけて、恐竜の骨とかをそこに移せば、本棚が一段空き、
そこにノートを入れることができます。
ぼくはさっそく、片付けたての机に足をかけ、本棚の上のラピュタを目指しました。
つくえにのったらおかあさんにおこられる、みたいなチャチな思想は、
冒険家となったぼくの脳内には、微塵も存在しませんでした。
本棚の上から天空の建造物を手にし、降りてきたぼくでしたが、
それは想像を遥かに上回る、いや、下回るといったほうがいいのか、
全く持って理解不能なシロモノでした。
「5年2組 ぼく
タイトル:空飛ぶ木
コメント:ねこを作るのに苦労しました。」
貼り付けられていた、遠い過去を記したパピルスには、そう記されていました。
これだけ見ると、なんともかわいらしい、小学生の豊かな発想を思わせるのですが、
現物はそんな甘いものではありません。
作るのに苦労したという「ねこ」なんて、どこにもいません。
中央にそびえるは、無数の黒い点が描かれた気持ち悪い木のようなもの。
アフロのムンクや、紫の脳みそ、極彩色のコップや茶碗などが、
幹から伸びるキツイ原色の触手に貫かれて宙を舞っているという、
カオスという言葉を具現化したら恐らくこうなるのだろう、
とさえ思わせるシロモノでした。
こんなもの、ぼくが目指したユートピアじゃない!
怒りに狂ったぼくは、飛行機を胴体からへし折り、
偽りのユートピアをゴミ袋へと放り込み、鼻の穴から炎を吹き出し、
おなかの貝殻を打ち鳴らし、尻尾で太陽を浴びて光合成をしました。
(勿体無い!と思われるかもしれませんが、さっきから飛行機と称しているこれは、
同じく小学生のとき学校で作ったと思われるプロペラ飛行機キットみたいなやつで
竹ひごをゆっくりまげて紙を張り、中央の棒に貼り付けるとかそういうの。
なんですが、当時不器用だったぼくはそれを、竹ひごを曲げる段階から失敗し
折ってしまい、今残っているのはその真ん中の棒にプロペラがついただけのやつで
その棒もなんかもうボロボロでおまけに極彩色でキモかったのです。
当時のぼくの色彩センスはどうかしていますね。)ひととおり怒りに溺れたあたりで、ぼくは正気を取り戻し、
本棚の整理を終え、見事、机と本棚をきれいにすることに成功しました。
いい仕事をした後のぼくは、心地よい疲労に包まれ、
ベッドに倒れこもうとしたのですが。
ベッドの上には、外したものの置き場に迷った
ハイパーシステマチック棚が、横たわっていました。
今晩寝るとこがないんですが、どうしよう。
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