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Muggy
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……博士はなんの研究をしている博士なんですか?
とぼくは問う。

「うむ。いい着眼点だね。これを見なさい。」

博士はそう言って、窓にかかったブラインドをカラカラと巻き上げた。
部屋に夕日が差し込む。窓の外には、大通りが見える。
それとぼくの顔を交互に見ながら、博士は続けた。

「なにか気付いたことはないかな?」

……車通りがそこそこ多いですね。この時間帯だからでしょうか。
みんなきっと、家へ帰るところなんだ。
……あっ、博士がしているのは、もしかしてこういう交通事情の研究ですか?
それか、そこからわかる人間心理がどうのこうの……とか。

「惜しい。惜しいね。実に惜しい。だが、着眼点は間違っていない。」

博士は両腕を真上に突き上げながらスクワットをするという
オーバーリアクションを取り、ぼくをほめたたえた。
そして、そのまま黒板の前まで移動すると、何か書きはじめた。

「私が研究しているのはね、これだよ。着眼マスターのMuggy君。」

大きな丸が二つと、それをつなぐ無数の線。
ええと……メガネの研究ですか?
何か分からなかったぼくは恐る恐る聞いてみる。
言ってから、窓の外の景色とメガネはぜんぜん関係ないな、と気付く。

「着眼点こそ悪くは無いが違う。これは自転車だ。
 私が研究しているのはね、自転車の交通量だよ。
 ふたたび窓の外に着眼しなさい。」

言われるがままに窓の外を見ると、確かに、しばらく見ていると
車ほどの頻度ではではないものの、時折、眼前を自転車が横切っていく。

「私はこれをカウントしているのだ。しかも、
 右から来るものと、左から来るものと、別々に集計をしている。」

……はぁ

「なんのことかわからないという顔をしているね?Muggy君。
 だが、着眼点は優れているぞ。」

ぼくが何か言おうとする前に、博士はテーブルの上のミニ扇風機を一つ手に取り、
電源を入れると、床に並んだ水槽のひとつに浮かべた。
ぼくもあわてて、ポケットからスーパーボールを取りだし、そこへ放り込んだ。

「こういった調査は、一日とか二日とか続けたくらいでは意味がない。
 日によって誤差があるからな。しばらく続けて、それを収束させるのだ」

……なんの話でしたっけ?

「自転車だ。私は一カ月のあいだ、朝から晩までこの調査をつづけた結果、
 平均右から160、左から172の自転車が走っていったことがわかったのだ」

……左からの方が多いですね。何故でしょう?
一日あたり12人、一か月なら31倍で372……。
それほど多くの人が、右に行ったきり帰ってこないということでしょうか。
右にはなにがあるのでしょう?

「きみの正確無比な着眼点には感嘆するよ。君の瞳はスナイパーと呼んでも良い。
 だがぜんぜん違う。てんで的外れだ。スナイパーが聞いてあきれる。」

「172人のうち12人が、行きと帰りで違うルートを通っているというだけの話だ。
 それか、行った先で一泊したりしているかもしれないし、私の数え間違えという
 だけかもしれない。行方不明なんてわけがあるか。」

……う、確かにその通りです。ごめんなさい。
確かにその通りですね。ぼくがおかしなことを言っていました。
そうですよね。毎月372人ずつも行方不明になっていたら、大騒ぎですよね……

「ああ。その通りだ。その着眼をこれからも磨きなさい。
で、私の研究しているのは、なんかそんな感じのやつとかそういうのだ。
わかったかね。」

博士はそう言ってテレビをつけた。

自転車に乗った人が毎月372人ずつ行方不明になる怪現象のおこる町について、
緊急特番が組まれていた。この現象が起こり始めてから10年。
行方不明は累計で4,382人になるという。

いい着眼点だ、とつぶやき、博士はテレビを消した。

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