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―うさぎ1―



うさぎがいました。

そのうさぎは、ぬいぐるみでした。

でも、お店で売っているような

きれいでかわいいの、ではなくて

白くてきれいだったはずの体には

赤茶色いシミができているし、

かわいい服なんて 着ておらず

雨や風で 毛もぼさぼさでした。

ある 誰が通ることもない路地の

ある 電信バシラのかげのかげに

誰にかまわれることもなく、

ただただ毎日、おりました。



―女の子1―



女の子が いました。

生クリームのような色の 肌をして

フルーツのような色の ほっぺたで

ジュースのような色の 服を着た

とってもかわいい 女の子でしたが

ここのところ 最近は、ずっと

悲しい顔を していました。


女の子は そのうさぎのことを

知っていたのですけれど、

拾って 洗ってあげることも

しなければ、踏んだり けったり

いじめることもせずに、

いつもただ 悲しい顔をして

見ているだけで いました。



―うさぎ2―



うさぎはある日、自分の前足が

片方しかないことに 気付きました。

それは 一週間も前から失くなって

しまっていたのですけれど、

うさぎは今初めて そのことに

気付いたのでした。



―うさぎ3―


うさぎの 無くなった前足の

付け根から はみ出たものを

ぼんやりと眺めながら、

悲しい顔して たっている女の子。

その存在にうさぎは気付き、


「ねえ あたしの右手 知らない?」


そう 話しかけようとしました。

しかしやはり、ぬいぐるみが

喋れるはずなど ありませんでした。



―女の子2―



女の子は、そのうさぎに話しかけられた

ような気がしました。うさぎからは何も

声なんて 聞こえませんでしたが

それでも、話しかけられたような

そんな気がしたのです。


「そこに落ちてるよ。あなたの後ろ。

あなたは動けないようだから 拾って

くっつけてあげたいけれど・・・

私にはできないの。ごめんなさい。」


女の子もまた、声も出さないで

そう、答えました。



―うさぎとオジサン―



ある夜。

お酒のにおいが しました。

真っ赤な顔した オジサンが、

ふらふらと うさぎのいる路地に

迷い込んできたのでした。

だいぶ酔っぱらっているのでしょう、

オジサンは うさぎに倒れこむと


「なんだあ、これ」


うさぎの周りにちらばっていた

ジュースのような色の布きれを

拾い上げました。


その布きれに引っ掛かって

ぶら下がっていたものを見たときの

オジサンの顔は、もう 赤くなど

ありませんでした。



―女の子6―



裏路地から 運び出される うさぎと、

涙を流す 大勢の人たち。


それを見た 女の子は、

安心した顔、一週間ぶりの笑顔で

あの日 着ていた色 なびかせて

生クリームのような色の 光の中

静かに 消えていきましたとさ。

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