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-1-

世界には、金のランプがいくらかありまして
こすれば魔人があらわれまして
願いを3つ、叶えてくれるのでした。

拍手[1回]

-2-

魔法のランプのうわさ 聞きつけた若者が、
ランプを拾って、キュとこすりますと、
ヒゲも髪も伸びに伸びて、痩せ細った魔人が
モクモク あらわれました。魔人は若者に問います。

「お前の願いはなにか?
叶えてやるぞ、3つまで。」

若者 嬉しそうに、答えます。

「まずはたくさんの そうたくさんの 金をくれ!
一生かかっても 使い切れないような富!」

魔人 ソリャと叶えてあげました。
若者の通帳、ゼロが5つ6つ7つ 増えました。

「2つめは、超綺麗な 超かわいい 彼女だ!
みんなが 羨ましがるような!」

魔人 またソリャと叶えてあげました。
妖艶な美女があらわれて 若者の体に腕を絡ませました。

「3つめの 願いは な・・・」

若者にやり。これを待ってましたといわんばかり。

「無限に願いごとを叶えられるようにしてくれ!」

魔人 今度は、ソリャ なんて言わず、ただ
叶えたぞ と呟いて煙になって消えました。
若者 どれどれと 試してみましたが、
4つめ以降の願いは 全く叶いません。

「ソリャ、ソリャ!・・・もしかして騙されたのか?
だとしたら、願い1つ分損したことになるじゃないか!」

若者 とうとう怒りはじめました。
すると トントンと 美女が若者の肩をたたきます。
魔人が残していったランプを指差して。

「そうか、あれに秘密があるんだな。
ありがとう、教えてくれて。」

若者、空になった金のランプを手に取った瞬間。
ランプに吸い込まれ、あたらしい魔人になりました。

「お前の願いは叶ったんだよ。お前は、好きなだけ
誰かの願いを叶える権利を手に入れたんだ。
誰かが金を願ったら、お前のその たくさんある
財産をそっくりやりな。誰かが女を望んだのなら
私をそいつに差し出しな。」

そう微笑んで 消える美女を、若者はただ
呆然と見ているしかありませんでした。


-3-

何よりも自分のことが嫌いな青年が、
ランプを拾って、キュキュとこすりますと、
ふてくされた 若い魔人が
モクモク あらわれました。魔人は青年に問います。

「お前の願いはなにか?
叶えてやるぞ、3つまで。」

青年 しばらく考えて、答えます。

「1つめの願いです。ぼくの持ち物、ぼくが作ったもの。
ぼくがこれまで 生きてきた証というのを、
まるごとすべて、何もかも 消してください。」

魔人 少し驚いて、良いのかと尋ねます。

「良いんです。あなたの力があれば、富も名誉も
なにもかも手にはいるんでしょうけれど・・・。
そんなことで、頑張って生きている人たちを
越えるのは ズルですから。ぼくは ただ、
ぼくの 一番嫌いなものを 消したいのです。」

魔人 困りましたが、エイヤと叶えてあげました。

「2つめの願いです。世界中の、ぼくを知る
すべての人間の脳みそから、ぼくに関する記憶を消してください」

魔人 また驚いて、本当に良いのかと尋ねます。

「良いんです。ぼく 3つめの願いごとは、
“ぼく自身を消してください”にするつもりだから。
でも ぼくは弱い人間なので、ぼくが消えて
1人でも 悲しむ人がいるのは嫌なんですよ。
だから 消えるまえに みんなにぼくを 忘れてほしいのです。」

魔人、仕方なく エイヤと叶えてあげました。


「あれ・・・?ぼくは いったい だれなんでしょう?
すいません そこの、不思議な格好のあなた。
良ければぼくが誰だか 教えてもらえませんか。」

魔人、エイヤと叶えて 煙に消えました。


-4-

世界平和のため がんばる女性が、
ランプを拾って、キュキュキュとこすりますと、
青白い顔をした 年寄りの魔人が
モクモク あらわれました。魔人は女性に問います。

「お前の願いはなにか?
叶えてやるぞ、3つまで。」

女性 すかさず、答えます。

「私は世界の平和を望んでいます。
すべての人が、楽しく暮らせる世界を。
誰も くだらないことで争わない世界を。
だから世界から 争いをなくしてください。
争う人なんていない世界に、してください。」

魔人 トウッと叶えてあげました。

「次は・・・。世界には 理不尽な理由で苦しんでいる人が
たくさんいます。そういう 辛い思いをする人が
ただの1人も いない世界。そんな世界にしてください。」

魔人 咳をして、トウッと叶えてあげました。

「次で最後ですね・・・。えーと・・・そう。
強い立場の人が 自分の欲のために 弱い立場の人を
虐げたり 奪い取ったり しないような世界。
強い人 弱い人、そういうもののない、
平等な世界にしてください。」

魔人 咽込んで、トウッと叶えてあげると、
パッと消えて 見えなくなりました。


世界には、誰1人いなくなっていました。
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