たとえばこれから起こる出来事を予測したいとき
何らヒントになり得ない、過去の出来事の羅列が与えられるのみなら
プレイヤーである「あなた」は、それを参考にするのでしょうか?
たとえばジャンケンゲームがあるとして
過去5回までの、相手が出した手の順番を閲覧できるとして
それがたとえば グー、グー、グー、パー、グー
だったとしたならば
プレイヤーである「あなた」は、次の手をどう読むでしょうか?
たとえばその相手が人間であったなら、その過去のデータは
参考になるものなのでしょうが
たとえば相手が意志を持たないコンピュータで、尚且つ
特に法則もなく、ランダムに出す手を選択しているとしたならば
それを知ってもなお、
プレイヤーである「あなた」は、過去の手を参考にできるでしょうか?
ゲームを作る際、とりわけNPCとの対戦を考えるとき、
「あなた」と呼ぶ仮想プレイヤーの思考を考えることがネックになります。
ゲームが完成して世に出るまで、そのゲームをプレイするあなたは
存在しえないわけで、テストプレイヤー募集なんて手もありますが、
あまり完成前のデータを人に見せるのが好きではないので、
基本的にバランスなど考える際は空想の「あなた」が必要になります。
便宜上それを「あなた」と呼んでこそいますが、
それは別に今これを読んでいるあなたのことではなく、
ましてやどこぞの誰であるというわけでもありません。
そもそも、どこかの誰かと同じ思考は得られません。
インドの神話にアナンタという蛇神がいますが、特に関係はありません。
自分で作っている最中のゲームを自分でテストプレイする際、
ぼくは、このゲームのすべてを把握しているぼくではない、
まだこのゲームの内容を1ミリも知らない人物の気持になろうとします。
これが完成して公開された場合、これを遊ぶ「あなた」は、
いったいどんな行動をとるだろう?と考えます。
ここに落ちてるアイテムに気づくだろうか、とか
この仕掛けは少し難しいかな・簡単かな、といった具合に。
けれどもまあ、ぼくのゲームをどれくらいの人が遊んでくれているのかは
分かりませんけれど、少なくとも、みんな、少なからず違う思考を
しています。ゲーム内の仕掛けに対し、そこでどう考えるか?
がいろいろであったり、どの道を選ぶか、がいろいろであったりします。
人の数だけ考え方があるわけですから、どう考えたって
仮想プレイヤー「あなた」は力不足なわけですよね。
そのあたりは神話のアナンタにも似ています。
その名前は無限という意味で、千の頭を持つといいます。
そして、仮想の「あなた」は、どうしても、一度では
全員の思考に対応した行動をとることはできないわけです。
仮に、「あなた」に与えた思考ルーチンとも呼べるものが、
ゲームを実際あそぶ99%の方の思考と100%の一致を見せても、
残り1%の方の思考と1%のズレがあったとしたら、
ぼくの動かす仮想「あなた」に価値はなくなってしまいます。
プレイヤーの行動を想定することに意味があるのかさえ
分からなくなります。
行動を想定するときに、99%のズレよりも1%のズレのほうが
あとになって恐ろしいことは、多いです。
クロゥズドのグッドEDなどは、まさにそれです。
たとえばこれから起こる出来事を予測したいとき
何らヒントになり得ない、過去の出来事の羅列が与えられるのみなら
ぼくは、それを参考にすることができるのでしょうか?
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