口内炎になりました。
自分の口が、憎くて憎くてたまりませんです。
口あけて鏡覗き込んだりしてみても、
あふれだすのはドス黒い憎悪のオーラ。
ああ口が憎い。口が憎い。世界が憎い……!
とか思いながら鏡を見ていると、
ふいに鏡の中のぼくは黒服の男に姿を変え、
恐ろしい顔でニヤリと笑って言うのです。
「力が……ほしいかい?」
しばし静寂。うなずくぼく。
鏡が割れ、黒い風が吹き荒び、
テーブルタンス机に時計と
家具一式が一通り吹き飛ばされたあと
そこに立っているのは、
バチバチと憎しみを鳴らし、恐ろしい笑みを浮かべる、ぼく。
その口に炎をたぎらせて、いま世界への復讐がはじまるのです。
そんな展開を期待してしばらく鏡の前にいたけど、
口の中が痛いばっかりでよいことはひとつもありませんでした。
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