節分ですね。みなさまどうお過ごしですか。
ぼくはといいますと、例の「鬼」連中が
依然として何体か外を徘徊しておりまして、
未だ一歩も外に出られない状況です。
今年はぼくの家が、鬼に奪われないよう、金棒を隠す役目なのですが
どうも鬼はもう、この家に金棒があることに気づいているようでして、
さっきからこころなしか、窓の外に見える鬼が増えつつあります。
現在、午後7時ちょい過ぎ。残り5時間で鬼は露と消えるはずですが、
果たして耐え切れるでしょうか……。
ここで、セツブンという忌まわしき呪いの行事に縛られた国・日本に
お住まいのみなさまは、当然
「“魔滅”《マメ》で鬼を退けることはしないのか」
という疑問をお持ちになったことでしょう。
確かにマメは、鬼を倒すことのできる数少ない神器です。
殴ろうが蹴ろうが斬ろうが撃とうが燃やそうが
死ぬことのない「鬼」を消し炭にかえることのできるものといえば、
マメが筆頭であるというのは紛れもない事実。
大豆に小豆に落花生、枝豆、コーヒー豆から、果ては豆しばに至るまで……
ぼくも勿論、今日の日を生き延びるため、たくさんのマメを
確保してこそいました。
マメとは鬼との戦い、特に今年のぼくのような、
金棒を隠し通すための篭城戦において、まさに攻防一体の武器であるといえます。
戦いに必要なのは武器、篭城に大切なのは兵糧。
マメは、その2つを同時に満たすことができるのですが
今日の午前0時0分から明日の午前0時まで続く「セツブン」、
その暗黒の24時間を耐え抜くためのマメが、
実は、もう、ぼくのところには1粒も残っていないのです。
つまり、その、大豆に小豆に落花生、枝豆、コーヒー豆から豆しばまで、
全部、余すことなく、食料としていただいてしまったのです。
故に、鬼に対してこちらから手出しするのは難しい状況。
重砲「魔姫」《エホウ・マキ》と呼ばれる必殺の大砲も
1発備えてこそいるのですが、これは使用する間一言も発してはならず、
庚の方角、すなわち西南西に向けてしか発射することができないという、
厳しい制約のある大砲です。
喋ってはいけないというのはまだしも、
方角指定が存在することが今のぼくには大きなネックでして、
現在「鬼」が多くタムロしているのは、ぼくの家の東側。
これでは鬼を狙い打てないのです。
もしもそれらの制約を破って使用した場合、暴発する可能性があるとも
言われていますし……。
八方塞、打つ手なし、万事休すの四面楚歌というやつです。
今のところは、まだ豆があると見せかけるために、
枡に手をいれてジャラジャラする素振りを窓から鬼に見せるというブラフで
なんとか持ってこそいますが……。
一応、このまま現状待機です。しかし万が一ブラフがばれて
鬼に攻め込まれたら、魔姫を暴発させて、ぼくごと金棒を焼き払ってしまおうと
考えています。その時、なるべく多くの鬼を巻き込めれば言うことなしでしょうか。
町の人たちに危害が及ばないようにするためには、もう、それしかないのです。
全ては、金棒を守る役目を負いながらも、それを果たせなかったぼくの
力不足なので、生き残りたい、死にたくないなどと言う資格なんて
よもや、ありはしないのでしょうけれど……。
もしも、まだ生きることが許されるなら、奇跡よ起きてください。
金棒の守護に就くと話したとき、おびえるぼくを
やさしく送り出してくれたあの子にもう一度会いたいんです。
死亡フラグもたてたところで今ちょうど、鬼がドアをやぶろうとする音が
聞こえてきました。もし生き残れたなら、またお会いしましょう
グッドラック!!!
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